第8号 「ソニーショック」が象徴していること

2002.05.09

「ソニーショック」が象徴していること
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━<2003年5月9日>━━
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■■■「知」とIT/ビジネスへのTIPS
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情報資本主義の今を考えるコラム
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http://kinyuu-literacy.hp.infoseek.co.jp
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第8号 「ソニーショック」が象徴していること

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■ソニーブランドは3年連続1位、しかし株価は大幅下落

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毎年恒例の、日経BPコンサルティングの調査「ブランド・ジャパン2003」で
、ソニーが3年連続1位となりました。しかも今回は一般消費者、ビジネスパ
ーソン両部門で1位でした。

ところが03年4月25日の東京株式市場で、ソニーには朝方から大量の売り物
が殺到、あまりにも売り物が多すぎたために、取引時間中には売買が成立しな
い異常事態となりました。大引けには比例配分でようやく値段がついたものの、
前日比ストップ安(500円)3220円、しかも3879万株もの大量の売り物を残
す、正に衝撃的な結果となりました。
明けて28日も大量の売り物は続き、株価は連日のストップ安となり2720円ま
で売り込まれました。
「ソニーショック」と呼ばれ、同時に日経平均株価も連日でバブル後最安値を
更新したのです。

その前日24日に、ソニーは2003年3月期の連結営業利益を発表しました。
1854億円(2002年3月期比38%増)と増益になったものの、これが従来予想
を約1000億円下回ったことと、2004年3月期の営業利益計画が事前の市場予
想を大幅に下回り、03年3月期比30%減の1300億円と大幅減益の見通しでし
た。この発表が大量の「失望」売りを誘う結果となった、というのが一応の説
明です。

株価変動には需給要因と業績要因があります。需給要因を横に置くと、現在の
業績水準と将来の業績「期待」値との間で、上げ下げを繰り返します。

一般消費者、ビジネスパーソン両部門で1位のブランド力を誇るソニー。
ブランドは無形の企業価値であり、「期待」の固まりです。
その「期待」を支えていた、ロジックのどこかに思い過ごしがあったのではな
いか。
市場は、単に数字の予想と発表の齟齬を言いたてて下がったのではないのです。
工業化社会から情報化社会への転回。日本経済はこれに梃子摺っているが、ソ
ニーは違う。ソニーこそは、情報化社会の日本の尖兵であり、知識資本主義の
申し子として世界に気を吐くIT革命のエースだ。人はそう思っていた。

しかしひょっとすると、それは違うのでないか。
直感的に市場は感じ取ったのではないでしょうか。

■高付加価値商品への誤解

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情報化社会、知識資本主義、IT革命、これらについて、確かに日本の政府、
マスコミ、アナリストには大きな勘違いが見られるように思います。
それは「高付加価値商品への誤解」と「知的資本経営への認識の薄さ」です。

これからは、付加価値の低い商品は中国を初めとする低賃金の国々で生産され
る事になる。しかし「モノつくり大国日本」に生き残る道はある。日本は高付
加価値商品の生産に特化、これで中国との美しい国際分業が計られる。

ところが日経4月24日の記事によると、電子情報技術産業協会は、電子機器の
国別・地域別生産シェアで、2003年中国が12品目のうち8品目で首位になる
との見通しを明らかにしました。

例:世界シェア     2003年予測  2000年実績
DVD−ROMドライブ 中国40.5%   日本40.8%
ノートパソコン     中国35.2%   台湾55.2%
デスクトップ      中国36.5%   北米27.0%

3品目とも、立派な「高付加価値商品」です。
美しい分業への期待は、文字通りには成立していないのです。

日本の電気電子機器メーカーはEMS革命に乗り遅れ、結果最初米国に(EM
Sの着想は当初米国企業のものでした)、次いで台湾に、最近では中国にシェア
を奪われ、今なお業績回復の展望が拓けません。
なに、ソニーよお前もそうななのか。
市場の「失望」とはそう言う事ではないでしょうか。

IT革命が技術のありようを変えてしまったのが原因です。

象徴的な事例として、頭脳の固まりである半導体。それを複数組合わせ、高機
能を担う「半導体のパッケージ」。それがIT技術によって、「システムLSI」
という一個の部品で済ませられるようになりました。

しかもその「システムLSI」は半導体製造装置を日本から買ってくれば、出
来てしまいます。

高度な価値は、少数の部品の中に封印され、後はレゴブロックを組上げるよう
な作業だけが残されました。
しかも、部品点数も減少。組上げ作業もより楽になったのです。

アセンブル(組み立て工程)と、部品の性格がIT技術により変ったのです。

高度な部品の集積化、ブラックホール化(価値の封印)は、部品点数を少なく、
アセンブルをシンプル化し、高度な技術を持たない単純労働(中国の農村から
出てきた人々)による、「高付加価値商品」の生産を可能にしてしまいました。

そして今度は、その部品アーキテクチャーを公開、標準化することにより、複
数の完成品メーカーから、大量に受注を受け、単価を安くする発想の企業が出
てきました。
EMS=エレクトロニクス・マニュファクチャリング・サービス。
各種の電気電子製品、部品の生産受託専門企業のことです。
「横」の連携で、安い商品を完成させる発想です。

昔、OEM生産という概念がありました。
オリジナル・イクップメント・マニユファクチャリング=相手先企業の商標
(ブランド)をつけて販売される完成品や半成品の受注生産。要は下請けです。
特定の企業からの特定の(他に転用の利かない)部品の生産です。

EMSは技術仕様をオープンにすることより、業界横断的な部品の標準化を達
成し、複数企業から汎用品(転用の利く部品)の受注を受けるもの。

日本メーカーは、「縦」の連携が強い産業構造をしており、この波に乗り遅れ、
中国の台頭を許し、負け一方です。

パソコン、DVDプレーヤー、液晶プロジェクター、デジカメ。
中国の「世界の工場」から出荷されるものは、衣類や白物家電だけではなかっ
たという訳です。

■知的資本経営への認識の薄さ

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二番目が、「知的資本経営への認識の薄さ」。

資本の源泉が個人になる、という可能性が見えてきたのがこの21世紀我々の立ち
位置です。
というよりむしろ、21世紀先進国企業の競争力の源泉はそこにしかない、
情報化社会、知識資本主義、IT革命、の含意もこの観点から吟味すべきです。
ソニーは当然このことを分かっていると思います。
ソニーは学生の就職先としても人気は抜群で、その理由は、ブランド力と同時
に人事制度についても常に時代の先端を行っているからです。

そのソニーですら、知的資本を最終、キャッシュに結びつける道筋を探しあぐ
ねているらしい。
なに、ソニーよお前もそうななのか。
市場の「失望」とはそう言う事ではないでしょうか。

80年前後から日本産業の「サービス経済」化の遅れがしきりに議論されました。
しかし現在、産業全体の従業員構成比、付加価値額構成比、どれを見てもサー
ビス産業が6割から7割レベルで、十分「脱製造業=サービス経済化」は進ん
でいます。
問題は、高い割合を占めるそのホワイトカラー独占のサービス産業の生産性が
低い為、バブル崩壊以降、国全体のGDP成長率が低いままだという点です
=「失われた10年」。

しかも実は、ホワイトカラーは製造業の中にもいます。
工場の出荷原価のうち、所謂「原材料費+加工原価」は20%強というのが現状
です。
残り80%弱は、ホワイトカラーの経費です。
モノを作ったり、運んだりする作業では、作業工程を分解、標準化し、生産性
を向上させることに日本の企業は成功しました。
しかし研究開発を含む情報収集、分析、解釈、意思決定という、ホワイトカラ
ーの情報作業、知識作業について、生産性向上の糸口が見えず苦戦しています。

モノの生産性向上より、情報の生産性向上が重要な社会が到来=情報化社会

情報収集、分析、解釈、意思決定という、情報作業、知識作業のノウハウは
「ヒト」に属する、従って「知的資本(ヒト)」のマネジメントが決定的になる
という点が「物的資本(工場)」優勢の時代と異なる=知識資本主義

定型作業を工程分解、標準化、デジタル化する事で、時間をセーブ、ホワイト
カラーに非定型作業に費やす時間を確保したうえで、解釈、意思決定(非定型
作業)のための支援ツールを準備する事が技術的に可能になった=IT革命

『現実に支配力をもつ資源、最終決定を下し得る「生産要素」は、今や資本
(マネー)でも、土地でも、労働でもない。それは「知識」なのだ。』
〜「ポスト資本主義社会」
ドラッカーがこれを言ったのがIT革命により米国がニューエコニミーに沸いた、
90年代の初めです。

しかし日本は、サービス産業ばかりでなく、国際舞台で活躍する電気電子産業
の企業ですら、「工場の論理」に絡め取られ、IT革命を活かしきれず、知識資
本主義にふさわしいマネジメント手法確立に失敗、情報化社会に乗り遅れ、ホ
ワイトカラーの生産性向上が実現できていません。

モノの生産性向上は「工場」で図られる。工場は会社所有であり、従って会社
固有のノウハウを習得することを優先する人事体制(長期雇用、勤続年数本位
の賃金制度)、企業文化(共同体志向)が選択すべきだ。これが「工場の論理」
です。

90年代央から、例えば「成果主義」が採用され、ソニーは「360度評価」等更
に先進的な取り組みで有名です。しかしここ2、3年そのゆり戻しが来ている
現状です。
共同体志向の企業文化のままでは、人事制度だけ改定してもうまくいかない、
ということです。

ソニー株の下落は、知的資本を最終キャッシュに結びつける道筋の発見、会社
と社員の関係の再構築、に苦しむ日本を象徴しているのではないでしょうか。

そして、「高付加価値商品」で縦の連携に阻まれている事と「知的資本経営」へ
移行できずにいる事、この両方に通底するのは、閉ざされた世界(系列等含む
広いグループ会社、会社内部)に固有の知識、ノウハウだけではもはや立ちい
かないことに対する認識の欠如、乃至分かっているのに行動に移せない知的誠
実さの欠如ではないでしょうか。

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今日は一寸固かったですか?
それではオマケ。
気分転換に下記URLで、あのサントリーの「回転する少女」が見れます。
今は、「空へ伸び上がるサラリーマン」ですよね。
http://www.suntory.co.jp/softdrink/aminoshiki/page4.html

Q:あのCMは、本当に回っているんですか?
A:はい。あの動きは、何のしかけも補助もなく、まわっています。

Q:あの女子高生は誰ですか?
A:「小田瑞穂(おだみずほ)」さんという新人タレントです。

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