第11号 「2007年問題」とは

2002.07.21

「2007年問題」とは

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━<2003年7月21日>━
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■■■「知」とIT/ビジネスへのTIPS
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情報資本主義の今を考えるコラム
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http://kinyuu-literacy.hp.infoseek.co.jp
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第11号 「2007年問題」とは

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■IT業界の2007年問題。

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CSKの有賀貞一副社長が,IT業界におけるベテラン引退問題を,「2007
年問題」と呼び、業界内で共通用語として定着しそうな気配です。

「2007年には,1947年生まれが60歳になる。団塊の世代でもっとも
人数の多いのは1947年生まれと言われている。このため日本の情報化を担
ってきた人材は1947生まれとその前後に集中している。彼らがほぼ完全に
引退する時期が2007年だ」と言われたのが出所です。

しかし、日本の企業の大部分が、役員以外の人は50歳代のどこかで、一線か
ら外れていくような仕組みを持っています。社外に転出した人もいます。
「2007年問題」は、07年に顕在化する問題ではなく、「今そこにある危機」
だという認識が、昨年の「みずほ」の事故辺りから急速に広がりつつあるのです。

■数々のシステム障害は「2007年問題」が背景。

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昨年の「みずほ」のシステム障害は一番記憶に残っています。
最近では「りそな」でも同種のトラブルがあり、「りそな」は、システム統合そ
のものを延期することも検討しているようです。

他にもありました。
02年5月全日空の発券障害。
03年3月に起きた航空管制システムの障害。
03年5月システムだけで業務をしているジャパネット銀行が、22時間もの
間業務停止に。
03年7月東証の容量オーバーでのダウン。

こういう新聞に出てくる事例が決して特例ではなさそうだというのが、日本情
報処理開発協会の調査結果です。
平成13年度情報セキュリティに関する調査(718社回答)によれば、基幹
システムダウンが過去1年間に発生した企業は半数を超えます。
「全面的にダウンした」が65社で、「部分的にダウンした」323社を合わせ
ると、システムダウンを経験した企業は54.1%。
故障から次の故障の発生までは平均2938.7時間の間隔となっており、4ヵ
月に1度の割合で故障している計算となります。
(「わが国における情報セキュリティの実態」の概要
http://www.jipdec.jp/security/pdf/sec01/1.pdf  )

これらの直接の原因は色々でしょうが、その背景に「2007年問題」がある、
と今や考えられている訳です。

 

■「世代間問題」と捉える考え方が今のところ大勢。

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日本の企業の多くがコンピュータ導入に踏み切ったのは、1960年代の後半
以降、70年代に入ってからです。

「初めてコンピュータを入れたとき、たいていの企業は現場の業務に詳しく、
論理的な思考ができる若手を集めた。彼らに無理矢理コンピュータの基礎と開
発言語、そして事務処理の流れをえがく手法を教え込んだ。つまり業務知識、
IT、分析手法、そしてプロジェクト経験のすべてを兼ね備えた人材が創られ
た」(有賀副社長)。

30年以上経ちましたが、彼らが作った基幹系システムはまだ動いています。
たとえシステム自体は作り直されたとしても、業務の流れや処理の仕組みその
ものはあまり変わっていません。このため最初に設計したベテランが基幹系シ
ステムの中身について一番詳しいことが多いのです。

一方、現在の若手はIT要員として採用され、ITの専門家として育成された
世代。現場業務はよくわからない。ダウンサイジング主義の中で育ってきたた
め、若手にとって大型汎用機を前提に組まれたシステムは馴染みがありません。

企業の側も、基幹システムのメンテナンスという地味な仕事をベテランに任せ
きりにしてきました。この企業の対応はベテランにとっても、リストラを免れ
る策、若手との棲み分けを図ることにつながり、あまり若手にナレッジを伝承
しようとしない結果を導いたとされています。

 

■しかし、経営の問題、ナレッジマネジメントの問題ではないでしょうか。

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「システム自体は作り直されたとしても、業務の流れや処理の仕組みそのもの
はあまり変わっていません。」このことこそが実は問題の核心です。

業務の機械化、効率化(30年前の基幹系システム)という段階から、経営そ
のものの革新、ビジネスモデル、業務フローの見直しを迫っているのが、昨今
のIT技術の目覚しい発展です。

この認識に立つと「2007年問題」は、既存システムをどう引き継ぐかとい
う視点を超えて、経営の問題、その一部としてのナレッジマネジメントの問題
と捉えて対処すべき問題ではないでしょうか。

 

■「開発プロセスに関する実態調査」と「SLA」

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日経ITプロフェッショナルが,「開発プロセスに関する実態調査」を03年7
月に実施しています。
それによると,企業,組織に標準的な開発プロセスが必要と思うかどうかを聞
いたところ、「はい」と答えた割合は95.0%に上りました。
ところが、「勤務する企業や組織に標準的な開発プロセスがある」との回答は
5割強、理想と現実の間には大きなギャップが確認されました。

一方、情報システム部門の間で「SLA(サービス・レベル・アグリーメント)」
に最近関心が集まっています。
SLAとは,システム・サービスの提供者と利用者の間で合意したシステム・
サービスの内容,範囲,品質に関する取り決めのこと。システムの運用時間,
システム障害が発生したときの目標復旧時間,利用者の満足度などをSLAの
合意項目に含めることもあります。

 

■社内にこそ「SLA」を。

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これはIT企業と、発注企業との間でばかりでなく、一企業の中の、情報シス
テム部門と現業、基幹業務部門との間でも結ぶ動きがあります。

トヨタ、松下等の世界に展開する製造業の強さは「現場」の強さだとよく言わ
れます。
生産現場レベルに歩留まりやリードタイムといった数値的な指標を導入し,そ
れをうまく活用してきたことがその背景にあります。

この点情報システム部門は,製造業に学ぶべきところがたくさんあるのではな
いでしょうか。

生産工程の改善において、工数をそれこそ秒単位で計測し,ムダをそぎ落とす
努力を続けています。原価が常に意識され、「○○を頑張ろう!」のスローガン
の裏側で定数的な取り組みが行われているのが特徴です。その結果不良品の発
生率は,シックスシグマ(100万回当たり3.4回)レベルでの達成度合いです。

そしてコスト対効果での改善が志向される、というのが「経営の問題」として
の取り組みの要諦です。数字を使う。機会損失との対比でコスト対効果を論じ
る。これがポイントです。

無論情報システム部門は,システム障害の防止(品質向上)や構築/運用コス
トの削減に取り組んでいます。しかし「システム障害を減らしたので,来年度
のIT経費負担は1割増しで」とは間単にいかないのです。かけたコストと、
得られた効果を数字で示し、そうしなかった場合との対比で数字を比較検討す
ること、説明すること、が本来求められるのです。

当然現場の、情報システム部門に対する要求も変らなければなりません。
利用部門の担当者は「とにかく止めずに動かしてほしい」との要望をシステム
部門に寄せがちです。システム部門からしてみると,「就業時間の間は止めない」
を求めているのか,「24時間連続稼働させる」のを求めているのか,はっきり
しません。
この辺りの社内全体の意識改革に、SLAの導入が適しているとされているの
です。

■SLAの発想を下敷きにして、経営の問題として対処していくべき。
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とりわけ今は、IT技術のパラダイムシフトが起きています。
それは「論理結合」から「データ結合」へ。「ウオーターフォール型工程分割」
から「要件定義=ソースコードの自動生成」へ、という変化です。

その結果、プログラムのシステム環境依存が解消される方向性があり、アプリ
ケーションソフトのシステム環境からの独立が実現しようとしています。
このことはシステム構築コストに大きく影響する事象です。

そうだとすると、「2007年問題」は単に、ナレッジを世代間でどう移転する
かという問題に留まらず、IT技術のパラダイムシフトに対応して、どう新し
いビジネスモデルを立ち上げるのか、どういうシステムインフラを組むべきな
のか、その中で、旧来型の思想でシステムを引き継いだ場合の、コスト対効果
と、新技術をベースにしたシステム構築を構想した場合のコスト対効果を夫々
計りなおして検討する、という大きな経営の意思決定の問題になってきます。

SLAの発想を下敷きにして、経営の問題として、「2007年問題」へ対処
していくべきでしょう。

 

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