「デジタル家電が『日本』を救うかは微妙」〜(2)藤本理論を読み解く

2004年08月15日

■平成15年度ものづくり白書(製造基盤白書)のポイント。

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政府はもの造り大国の復活を目指している。
経済産業省、厚生労働省、文部科学省3省合同で毎年「ものづくり
白書(製造基盤白書)」を出している。平成15年版は下記URL
から見れる。
http://www.meti.go.jp/report/data/g40601aj.html
平成15年版では人材養成論を深めている。フリーターのことも真
剣に議論している。それと併せ企業改革・革新努力の様子を纏めて
いるが、その事例紹介の中でごく簡単に触れているのが「摺り合せ」
論だ。
http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g40601a00j.pdf
(平成15年度ものづくり白書(製造基盤白書)のポイント)
この「ポイント」のPPTの一枚目に【図表4 企業間連携・摺り
合わせによる製品開発の事例】がある。

この下敷きにあるのが、組織能力とアーキテクチャをセットで論
ずる藤本理論だ。

藤本隆宏氏は東京大学教授、ハーバード大学上級研究員そして「も
のづくり研究センター」長の要職にある。
氏の最近の報告書『グローバル化時代のもの造り戦略論〜組織能力
とアーキテクチャの視点から』からデジタル家電が日本の救世主に
なるかのヒントを探ってみよう。
http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/siryou/kiso_b11b.pdf

 

■財・サービスは「設計情報がある媒体に転写されたもの」。

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世の中のあらゆる製品は「設計情報がメディア(情報を担う媒体)
の上に乗ったもの」だと言える。
つまり、現代の財・サービスは「設計情報がある媒体に転写された
もの」と認識できる。設計情報が有形物に転写されれば製造業、無
形の媒体に乗って顧客に提供されればサービス業である。

さてここで、設計情報の基本特性が「アーキテクチャ」である。
「アーキテクチャ」とは、「どのようにして製品を構成部品(モジュ
ール)に分割し、そこに製品機能を配分し、それによって必要とな
る部品間のインターフェース(情報やエネルギーを出し入れする結
合部分)をいかに設計・調整するか」に関する基本的な設計構想の
ことである。

アーキテクチャには、大きく分けて、「擦り合わせ(インテグラル)
型」、すなわち部品設計を相互調整し、製品ごとに最適設計しない
と製品全体の性能が出ないタイプと、「組み合わせ(モジュラー)
型」すなわち部品・モジュールのインターフェースが何らかの意味
で標準化していて、既存部品を寄せ集めれば多様な製品が出来るタ
イプとがある。

最近よく耳にする「オープンアーキテクチャ」とは、モジュラー型
の一種で、インターフェースが業界レベルで標準化しており、企業
を超えた「寄せ集め」が可能なものを指す。

 

■3つのゾーンにプロットされた製品・サービスと、組織能力。

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こう整理すると、製品、サービスを3つのゾーンにプロットできる。
例えば乗用車は「擦り合わせ(クローズ)型」、パソコンは「組み合
わせ(オープン)型」。「組み合わせ(クローズ)型」はメインフレ
ーム、工作機械がこれにあたる。

次に企業の組織能力というものを考えてみる。
つまり、「擦り合わせ(インテグラル)型」に向いた組織能力、
「組み合わせ(オープン)型」に向いた組織能力、というものが想
定される。

製品や工程の「インテグラル度」が高いとは、企業が扱う製品・工
程を構成する諸要素の間の「相互依存性」(interdependence)が
高い。したがって組織内の統合(調整)活動に負荷がかかる、それ
に耐え得る企業は、つまり、「統合型(インテグラル型)のアーキ
テクチャ」を扱う組織は「統合的な組織能力」を持つことによって
競争力を高め得る、といえる。

より緊密な相互連携や濃密なコミュニケーションをこなし、部門間
の相互調整のメカニズムを発達させる企業、これが「擦り合わせ
(クローズ)型」に向いた組織能力である。

自動車におけるトヨタは正にこの典型だろう。

一方モジュラー的なシステムの特徴は、事前に設定されたモジュー
ル連結ルールに従って、機能完結的なモジュールを寄せ集めること
によって、全体システムの性能を実現する、という点にある。そこ
で競争力をもたらす「相性のよい組織能力」とは、個々の製品要素
・工程要素を正しく選ぶ「選択眼」つまりシステムの構成要素に関
する「目利き」としての能力である。

アメリカは移民の国である。建国以来、野心をもった、やる気のあ
る人材が世界中から流れ込んできた。アメリカという国は、そうし
た人材を即戦力として使うことで発展してきた。だから米国企業・
産業、とりわけ製造業は、「擦り合わせ」をできる限り省略するこ
とを、200年来の課題としてきた、といえる。

PCでのデルの成功はこの文脈上で理解できる。

 

■消費者の嗜好もゾーンにプロットできる。

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三番目に考えるべきは、製品・サービスに対する消費者の嗜好であ
る。
消費者の嗜好と上記3つのゾーンとの間にもある関係性が想定され
る。

消費者は、少なくとも二つの軸で製品群を評価すると考えられる。
一つは「変化・多様化」の軸であり、もう一つは「洗練化」の軸で
ある。そして、変化・多様性をより重視する顧客はモジュラー型製
品、統合性・洗練性を好む顧客はインテグラル型(擦り合わせ型)
製品を好む傾向が有る。

そしてこの嗜好は時代によって変化していく。市場ニーズの進化経
路が企業のアーキテクチャ選択に影響を与える点を忘れるべきでは
ない。つまり、何らかの技術の法則性のみによってアーキテクチャ
がどちらかに一方的に振れると言うことは、実はない。製品アーキ
テクチャの選択は、企業組織の製品設計能力と消費者の製品評価能
力の相互作用および共進化経路によって決まる、と言える。そこに
は実にダイナミックなバランス、リバランスの動き、変化がありう
るのだ。

 

■情報家電?。

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情報家電で日本の「モノ造り」が復活する、といった論調を最近よ
く目にする。
本当にそうなるかは、ITが情報家電それぞれの部品に与えるモジュ
ール化の技術的可能性と、消費者の嗜好が3つのうちのどのゾーン
へ行くか。そして、その場合の日本企業の発揮しうる「組織能力」
がどこにあるかで決まってくる。

但し、繰り返すが消費者の嗜好は変わる、進化する。
どのくらいの期間で、そういった消費者の嗜好へ対応するかも重要
な経営判断だ。日本企業がモジュール対応型の組織能力獲得だけを
目指して良いかは、慎重に判断する必要がある。

○関連図書
・ビジネス・アーキテクチャ 有斐閣
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/tg/detail/-/books/4641161143/249-4497700-9631548
・能力構築競争 中公新書
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/tg/detail/-/books/4121017005/249-4497700-9631548
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日本の社会風景を塗り替えてきた「団塊の世代」がまた新しい地平
を切り開くのかもしれない、と思わせるレポートがあります。
http://cnews.info-plant.com/press/press040804.pdf

現在と定年後とで何に「時間」を使うかの質問に対する回答の集計。
(増減ベース)
増やす時間:
旅行・レジャー  +14.5%、
新しいことをする +13.6%、
地域社会に貢献する+ 8.2%
旅行はよく言われる事項ですが、後のふたつは、意外と日本社会の
センチメントを変えることになるのではと期待されます。

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