「Baas(Books as a Service)」への第一歩~【セミナー備忘録】:人文社会学系出版社の将来に向けての一つ突破口

(気付きなど自分用の手元メモを公開するものです。議事録ではありません)

今回のセミナーは、大学アカデミック市場、とりわけ、大学図書館が議論の対象。

また特に先日プレスリリースした、「新刊ハイブリッド・モデル」を巡る発表の場。

そして本セミナーで講師の黒田さんが言いたかったこと。それは、

◎「読む力」、「読書という営為」こそが重要。
・「紙 VS デジタル」といった二項対立的発想はナンセンス。
・デジタル化を新しい選択肢として活用する発想こそ。
・ただデジタル化の潮流が「教育・研究」、ひいては「出版」「読書」を再定義することになるだろう、との見通しはある。

◎有斐閣・鈴木氏が提唱している「叡智の海」構想は、これから専門書出版社が目指すべき方向として共有していきたい。

◎大学図書館が「購買」という経路を通って、電子書籍を選定する、ということがない限り、マネタイズも事業としての継続性・安定性も確保できない。そのための工夫に、どれだけ汗をかけるかが現下の喫緊の課題。是非ご一緒に。


■セミナー概要:

人文社会学系出版社の将来に向けての一つ突破口
学術・研究機関(図書館)向け「新刊ハイブリッドモデル」の新たな戦略

 様々な電子書籍サービスが広がりを見せる中、人文社会系主要出版社などが垣根を越えて新たな世界を拓くべく、学術・研究機関を対象とした初の電子書籍サービスが開始されました。

◇ 慶應義塾大学出版会 ◇ 勁草書房 ◇ 東京大学出版会
◇ みすず書房 ◇ 有斐閣 ◇ 吉川弘文館
◇ 丸善 ◇ 京セラ丸善システムインテグレーション
こうした枠組みをつくるまでの経緯、学術書の新刊を冊子体と電子書籍とセットにして販売するメリットや、更なるサービスの展開、および今後の戦略を考えていく際に必要なこと、意識すべきことなどを、ご参加の皆さまと共に考えていきたいと思います。
学術・研究機関関連以外の方々にも、ヒントが満載ですので、奮ってご参加ください。

【講師】 黒田 拓也 氏
(一般財団法人東京大学出版会 専務理事)
【日時】 平成26年11月19日(水) 15時~
【場所】 日本教育会館 9階「飛鳥」の間
【運営】  一般社団法人 日本電子出版協会 定例会運営委員会


http://info.jepa.or.jp/seminar/20141119


◆関連クリップ
●出版6社の学術書を紙版・電子版セットで提供へ 「新刊ハイブリッドモデル」 http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1409/12/news130.html
1.毎月、新刊からの電子化実施。2.新刊でのタイミングでなら、そして紙と同時購入なら、電子を「お安くしておきますよ」が、ポイント!!


1.「新刊ハイブリッド・モデル」ができるまで

20141119JEPA定例会セミナー報告 新刊ハイブリッド 黒田 経緯
・まずeジャーナルの波が大学図書館を襲った(大学図書館資料費への圧迫=書籍費を削らざるを得ない)。
・その次に、機関リポジトリ運動が、研究成果を「オープン」に、「公開」していくものとして脚光を浴びた。その裏返しで、有償での公開である「出版」活動の基盤が揺さぶられることに。
・こういったことを背景に、慶應大学・メディアセンターの入江さんを訪ねたのが、今回の人文系6社による、新刊ハイブリッドモデル創出につながる、そもそものきっかけになったこと(2007年)。
・2008年にシンポジウムを開いたりしたが、ただ議論だけしていても空しい、まずは実験をやってみて、ユーザーがどういう反応をしめすのか見てみたい、ということでいわゆる「慶應大実証実験」が始まった。

・たまたまそのころ慶應メディアセンターが京セラ丸善システムインテグレーション社のシステムを検討していたので、実験のプラットフォームはそれを使うことに(Booklooper)。

◆関連クリップ
●慶應義塾大学における電子学術書利用実験プロジェクト最終報告~既刊書・電子学術書の学術利用の可能性 https://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/55/5/55_318/_pdf


https://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/55/5/55_318/_html/-char/ja/Graphics/55_318fig08.jpg

・この総括のため、2013年7月には大日本さんの助けを借りて合宿で議論をすることをやった。

●電子学術書学生モニターアンケート結果  慶應義塾大学メディアセンタ- http://project.lib.keio.ac.jp/ebookp/attachment/enquete.pdf
「Q22. BookLooperに搭載された電子ブックの改善点」は、だいたいどれもアップルのibooks、アマゾンのKindleには搭載済み機能。ふたつのストアが日本に進出し、コンテンツが揃うなら一気に普及する可能性がある、ということか。2〜3万円なら読書専用端末を買う、とも。

・そこで確認できたのは、電子化により紙でできないことができるようになる様々なメリット、そういった新しい機能へのニーズは確かにあること。その一方で、ニーズ表明をする学生の側に、紙へのこだわりもありつつ、紙と電子、両方買えるだけの財力は全く期待できない点。つまり、電子書籍は図書館に買ってもらうしかない(これはあくまで専門書の場合の話)こと。

・そこで、「ハイブリッド」のコンセプト、またざっくりした「工程表」もできあがっていった。

・具体的には

貸出履歴データは、新刊を電子化せよ、と言っていた。
図書館の購買プロセスに落とし込むには、紙と電子を抱合せる必要があると推測された。
年度末商戦の商材として電子書籍が売られている限り、安定的な購買は望めない。なぜなら、大学予算の執行(電子書籍に割り当てられる)金額は為替により(eジャーナルは外貨建て)大きく変動するから。

・すなわち、「ハイブリッド」モデルとは、

新刊を同時に電子化し、
月次ベースで図書館に案内し、
紙と同時に購入してもらう。
そのインセンティブとして、紙と同時なら電子版を特別価格(つまり安く)とする、

というものになっていった。

2.教育のデジタル化、そして「知の生成」のデジタル化

・「実験」中、自分自身でも、iPadで20点以上の専門書を読む体験をし、裏付けをとったが、学生からあがった要望や、あるべき機能は、ほとんど、Booklooperで実装が可能であった。
・またそれらは、その後実験が行われた他大学の事例や、新しい図書館構想でもリストアップされているものばかりだった。

◆関連クリップ
●アカデミック・リンクの取り組みと直面する諸問題 竹内 比呂也(千葉大学附属図書館) http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu4/002-1/siryo/__icsFiles/afieldfile/2012/10/23/1327117_1.pdf

●東大が描く次代の図書館像、電子書籍で書き込み共有し知の流通を実証実験 | IT Leaders  http://it.impressbm.co.jp/articles/-/10614

●「電子学術書共同利用実験 報告 : 東京大学における授業利用実験『重ね書きの教室』」石田 英敬(東京大学附属図書館副学長) https://docs.google.com/file/d/0BxjZAhdZPFjATWFLWl85b3ZNX00/edit

・たとえば、

図書館用の電子書籍と、自分がスキャンした素材(ドキュメント、書籍、教材など)とを同時横串検索したい。
教師が準備・作成する教室用教材との連携。
マーカー、書き込みを共有したい(ひとつの文章、引用箇所が様々なコンテキストで参照されていることがわかる=学習効果や研究の効率性の向上に資する)。
他のデジタル化・オープン化したデジタルコンテンツとの連携(たとえば、NDLのパブリック・ドメインの電子書籍群。大学学習資源コンソーシアム(CLR)のコンテンツ群 など)。

◆関連クリップ
●使い倒せ、国立国会図書館デジタルコレクション – ITmedia eBook USER  http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1405/22/news025.html

●設立趣旨 | CLRについて | 大学学習資源コンソーシアム http://clr.jp/about/index.html

20141119JEPA定例会セミナー報告 新刊ハイブリッド 黒田 引用120141119JEPA定例会セミナー報告 新刊ハイブリッド 黒田 引用220141119JEPA定例会セミナー報告 新刊ハイブリッド 黒田 引用320141119JEPA定例会セミナー報告 新刊ハイブリッド 黒田 引用4

3.「読む力」

20141119JEPA定例会セミナー報告 新刊ハイブリッド 黒田 読む力

4.出版のデジタル化、それは「Baas(Books as a Service)」への長い道のり

20141119JEPA定例会セミナー報告 新刊ハイブリッド 黒田 変化

・こうなってくると、「出版」「読書」そのものが変容、再定義されざるを得ない。

・これまで作られてきた、専門書、教科書のアーキテクチャには、学習効果や研究の効率性の向上に資する様々な「知見」が盛り込まれているが、しかしそれは暗黙知にとどまっている。
・これをまず可視化する努力が重要。さらにそれを、デジタルという環境下でどう再編成するかが出版社には問われている。加えてデジタルという環境下にふさわしい、「新しい知見」も構築していかなければならない。

・どこの専門出版社でも、その必要性に気付いてはいるが、なかなか日々の忙しい業務を抱えながら、一歩を踏み出すことができずにいるのが現状だ。

・見方を変えると、書籍を「サービス」としてとらえ直すこと、出版業をサービス業として再構築すること、それがいま、問われている。つまり、いまある書籍をただ電子化しても、それはゴールではない、ということだ。

・同時に再構築は、ひとり出版社側にもとめられているだけなのではない。図書館の側でも、まず大学教育の中に図書館の意義、機能を位置づけ直し、その視点から電子書籍購入の枠組み、予算化、ワークフローを確立してもらわなければらない。

・この両輪がきちんと回ってはじめて、大学アカデミック市場で、和書の電子書籍が定着することになるだろう。

5.『叡智の海』

20141119JEPA定例会セミナー報告 新刊ハイブリッド 黒田 叡智の海

◆関連クリップ
●出版資産のデジタル化で 無から有を – 日本電子出版協会 http://www.jepa.or.jp/material/files/jepa0000340954.pdf?PHPSESSID=7edf0981e0360c49d6147ca67fbec906
●成功例を聞く会 有斐閣編 【叡智の海】 http://www.jepa.or.jp/material/

jepa0000362066 叡智の海 2

jepa0000362066 叡智の海 3

jepa0000362066 叡智の海 4

6.最後に

20141119JEPA定例会セミナー報告 新刊ハイブリッド 黒田 最後に

広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中