7月28日 電子教科書のドリルをどうする!?
EDUPUBでは、対話的テスト、自動採点、集計、分析などの標準が制定されようとしています。
Wilbert Kraan氏に、IMSの技術がどのようにEDUPUBに利用されているかを概観していただき、さらにIMS Content PackagingとQTIの利用について述べていただきます。
米国では広く知られているIMSの技術も、日本ではあまり知られていません。日本で詳細なチュートリアルを開くのは有益だと思いますので、皆様ご参加下さい。講師:Wilbert Kraan 氏
通訳:村田 真 氏(JEPA技術主任)日時:2014年7月28日(月) 15:00-17:30
場所:神保町:日本教育会館 9階 平安の間
主催:JEPAプラットフォーム委員会
共催:大学ICT推進協議会(AXIES)学術・教育コンテンツ共有流通部会、JMOOC学習ログ・ポートフォリオ部会http://info.jepa.or.jp/seminar/20140728
プレゼン資料 http://www.slideshare.net/JEPAslide/sem015-kraan
(あくまで個人のメモを記録するものです。門外漢が記述していますので、勘違い、理解相違もあり得ますので、その点御考慮ください。またお気づきの点があれば是非、ご教示ください)
1.CETISは英国におけるIMSのセンター的組織になるべく設立された、教育分野での各種技術の相互運用標準化団体(Centre for Educational Technology and Interoperability Standards)。
IMSはここでは、「IMS Global Learning Consortium」のこと。
登壇者のWilbert Krran氏はCETISのAssistant Director。IMSが「Content Packaging」の仕様を決めた際の委員会でCo-Chairをされた方。また「QTI」でもCo-Chairを務めた。
2.IMS Content Packaging とは、
A.学習教材(コンテンツ)利用を活発にするため、システム間で、
・import/export
・aggregate/disaggregate
を容易にするような仕様を取り決めたもの。
B.organization(説明)とresources(コンテンツ)で構成される。
C.コンテンツのフォーマットとして、 Flash, Word docs, PDF, IMS QTIが射程距離にはいっている。
D.また対象システムとしては、
・Learning Management Systems (LMSs),
・repositories and
・authoring tools
などが想定されている。
○経緯:
・1999年 最初のドキュメントが起草(「1.0」)
・2004年 「1.1.4」でSCORMに採用。
・2009年 ISO 12785に認定(「1.2 public draft2」)
※EPUBとは、C.、D.の点で全く異なるのがわかる。むしろIMS Content Packaging の側で、EPUBを取り扱えるよう仕様を変更する筋合いのものかと推測されるが、そういうことも含め、「No current plans for further development」とのことだった。ただし「変種」はいくつかあり、たとえばIIMS 自身が、MS Common Cartridge(「1.3」 2013年)を作っている。
3.IMS QTI は「ドリル」「テスト」「演習問題」の類の技術的相互運用を可能にするための仕様で、「Question and Test Interoperability」の略。
○学習教材(コンテンツ)のアクセス可能性(検索して見つける)や、既存のコンテンツを容易に再利用して新規コンテンツを作成する(再利用性)ことが意識されていたため、次第にW3Cのモジュールのひとつである「XHTML」が意識され、XMLで記述されるフォーマットで再構成された(QTI2.0以降)。
3-1.QTI2.1の構成
A.Items:(「ドリル」「テスト」「演習問題」の)個別質問の要素に関する仕様。表示とは独立している点がポイント(※)。
B.Tests:(「ドリル」「テスト」「演習問題」の)実施面の仕様(定義やナビゲーション、採点)。学習者の習熟度にあわせ問題をスキップするなども可能にする仕様。
C.Packaging and metadata:個別素材を組み合わせるパッケージングのための仕様、およびそのメタデータ記述についての仕様
D.Results:採点結果の分析、評価をするため統計整備のための仕様
※ちょうどブログのWordPressが「テーマ」を変更しても、コンテンツ、データの類は新しいテーマに引き継がれるように、豊富なテンプレートを使いひとつ作成した「テスト」から、複数のテストのパリエーションを作成することができる。教材作成の生産性があげられる。
3-2.Accessible Portable Item Protocol
学習者のプロファイル(audio、video、textのどれを好むか)に応じた教材の選択。
3-3.実装、採用動向
・オランダ:高校に全面採用
・ドイツ:大学コンソーシアムで採用するところがある。
・フランス:高校の数学で採用。
・韓国:EPUBベースの電子教科書に採用する方向。
3-4.今後の更改の方向性
・「Content Packaging」と異なり、「QTI」は更改作業が続けられている。
・HTML5との融合が課題。
4.IMS LTI
・Learning Tools Interoperability の略。「LMS―外部ツール」間連携のための標準規格。LMSとはLearning Management System(学習管理システム)の略で、eラーニングでのOS(オペレーションシステム)とも言える存在。
・IMS LTIは LMS 上の外部ツールへのリンクすべてに一意な ID(resource_link_ID)を付与し、起動のたびにそれを外部ツール側に通知する点が優れている。これは他の仕組みにはない。
・このIMS LTI、またIMS QTI とEPUB(ここでは電子教科書、電子教材)とをどう連携させるかについてはさまざまな方法論があり得、まだ定見がない状態。
IMS LTIを使ってEPUBに「ドリル」「テスト」「演習問題」を結びつける方法論、それはやめて、IMS QTI をEPUBの要素にしてしまい、「ドリル」「テスト」「演習問題」を取り入れることで実現する方法論、などが議論されている。
・仮に後者だとすると、IMS QTI のバージョンアップが必要で、すでに現行バージョンが普及し、実装が進んでいるところには迷惑な話。一方日本のように、ほとんどIMS QTI の実装事例がなくむしろEPUBが普及し(始め)ているところでは前者のほうが取り組みやすいことになる。
■用語集
・SCORMとはShareable Content Object Reference Model)の略。eラーニングのプラットフォームとコンテンツの標準規格。 アメリカの国防省系の標準化団体ADL (Advanced Distributed Learning Initiative) が制定。
・JSONとはJavaScript Object Notationの略で、XMLなどと同様のテキストベースのデータフォーマット。その名前の由来の通りJSONはJavaScriptのオブジェクト表記構文のサブセットとなっており、XMLと比べると簡潔に構造化されたデータを記述することができるため、記述が容易で人間が理解しやすいデータフォーマットと言われている。
・XHTML( Extensible HyperText Markup Language )とは、Webページを記述するためによく使われるHTMLを、XMLに適合するように定義し直したマークアップ言語。W3Cが仕様策定を行っている。現在の最新版はXHTML 1.1で、「文書の見栄え」を指定するタグを廃止(見栄えの記述は全てCSSで行うことになった)するなど、文書構造の記述に特化した言語へと変化しつつある。
■関連URL
・[CETIS] http://www.cetis.ac.uk
・[Wilbert Kraan] http://wilbert.kraan.hackingtheuniversity.net/
・[IMS Global Learning] http://www.imsglobal.org/
・[IMS Caliper] http://www.imsglobal.org/IMSLearning
→次のページセミナー備忘録:電子教科書のドリルをどうする!?(2)~「教育の再設計」とEDUPUB
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