シャネルとピケティ あるいはフランスでのテロ

シャネルとピケティには共通点がある。母国での評価より、米国で熱狂的に迎えられていること。

かたやピケティは『21世紀の資本』の著者、経済学者。

他方、伝説のファッション・デザイナー、ココ・シャネル。

彼女はピケティが、富と所得の二極化、格差拡大のレベルが20世紀の世紀の変わり目前後のあの時代に、いま近づきつつある、といった、「ベル・エポック」の時代を孤児として育った。

「ココ」は実は愛称で、18歳で孤児院を出た後、お針子仕事の傍ら、歌手を志してキャバレーで歌ったが、当時歌っていた曲名に因んでつけられたもの。

そしてピケティが富と所得の格差が縮小したと指摘するふたつの世界大戦の時代に、ファッション・デザイナーとして認められ(「女は40を過ぎて、始めておもしろくなる」)、その地位を確立。さらに戦後、世界がまれにみる成長を果たし、「成長こそが格差への処方薬」である、という概念が普及していった消費資本主義の時代を、時代の寵児として成功を手に収めていく。

「私は流行をつくっているのではない。
スタイルをつくっているの」。

「世の中には、
お金持ちな人と
豊かな人ってのがいるわ」。

その人生の前半を中心に構成された映画『ココ・アヴァン・シャネル 』(オフィシャルサイト http://wwws.warnerbros.co.jp/cocoavantchanel/ )を観ると、ジェンダー問題を抱えていた当時のフランスが描かれているが、「孤児として育ちながら、後にファッションを通して女性たちの解放をうたう存在へ」と彼女を押し上げた背景に、フランスを含む近代西洋の、長い「自由」への道のりを育む社会があった、といっていいのだと思う。

そのフランスで、テロが起きた。

「自由」と「平等」を両立させる課題が、新しい環境の中に立たされている象徴的な事件なのだと思う。

格差は成長で癒えることはなく、別の知恵が必要なことこそがピケティが指摘している重要なポイントだ。


ピケティ用語集 http://bit.ly/1vjytXR

ピケティ勉強会(4) 実は、ピケティはこうも言っている。 http://society-zero.com/chienotane/archives/24

◇関連クリップ
●仏テロ、高まる「内なる脅威」 格差・移民問題はらむ http://www.nikkei.com/article/DGXLASDC08H0K_Y5A100C1EA2000/

「フランスは欧州でイスラム系移民が最も多い国(略)。最近では、過激派組織「イスラム国」に参加する若者が増え、渡航を検討中の予備軍を含めると1000人規模になるという。イスラム系移民が多いドイツやイタリア、スペインなども同様の危機に直面する」。

 

●フランス銃撃事件 オランド大統領、テロとの戦い継続の決意表明 http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20150110-00000141-fnn-int
「オランド大統領は、「今回の事件の容疑者は、真のイスラム教徒ではない」と述べ、事件後、国内のイスラム教関連施設に嫌がらせが続いていることを念頭に、国民の融和と団結を呼びかけた」。

 

●アノニマスが報復宣言 イスラム過激派のサイトをアタック開始か http://www.huffingtonpost.jp/2015/01/10/anonymous-op-charlie-hebdo_n_6450504.html

テロに対し、ハッキング。「ハクティビスト(政治的ハッカー)集団の「アノニマス」は1月9日、フランスの風刺週刊紙「シャルリー・エブド」が襲撃された事件を受け、イスラム過激派へ報復すると宣言した」。

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