電子教科書の規格標準化の意義~【セミナー備忘録】EDUPUB TOKYO 2014 公開セミナー

これで4回目となる国際会議「EDUPUB」が東京で開催(EDUPUB Tokyo 2014) され、EPUBの策定団体IDPF、それにQTI、LTI、Caliperなどの策定団体IMS/GLCの幹部、それに1回目、ボストンの会議をホストしたピアソンの担当者が来日した。三日間の日程の最終日、DAY3の催しとして、今回のホスト、IDPF、JAPET&CEC、JEPAが主に日本人向けに日本語での報告会を開催した。

●9月18日 EDUPUB Tokyo 2014 公開セミナー – JEPA http://info.jepa.or.jp/seminar/20140918

host edupub tokyo 2014

EDUPUBは電子教科書規格の標準化の活動

EDUPUBとは電子書籍の国際標準規格EPUBを教育目的に機能拡張するための共同作業、ワークショップ活動のこと。EPUBを策定したIDPFに、Webで使用される各種技術の標準化を推進するW3C、さらにeLearningの分野での標準化団体IMS/GLCが共同作業を行っている。電子教科書の規格が、EPUB規格の一部として具体化されようとしている。

この活動の意義は「標準化」と「オープン化」に集約される。

教育のデジタル化、教育の情報化の具体的イメージ

教育のデジタル化、あるいは教育の情報化は現在、世界の国々が取り組んでいるテーマ。共通する狙いはこれまでの「一斉学習(教室で先生から一斉指導を受ける)」に加えて、子どもたち一人一人の能力や特性に応じた学び(「個別学習」)、子どもたち同士が教え合い学び合う協働的な学び(「協働学習」)を強化すること。

その個別学習、協働学習の具体的な内容、イメージは下の絵図で理解できる。

12世紀にふさわしい学びの環境とそれに基づく学びの姿

ictを活用した指導方法の開発 

たとえば、
・子どもたちが情報端末を用いて繰り返し学習を行ったり、コンピュータにより子どもたちの回答の診断とその個に応じた補充・発展が行われることにより、知識の定着や技能の習熟を図り、基礎基本の習得につながる(=個別学習)。

個別学習 1

また、
・インターネット等を活用して、地域の人々や国内外の学校の子どもたち、さらには、社会教育施設、研究機関等の専門家等との交流を図り、多角的な思考力等を育む授業を行ったり、

協働学習 1

地域の大人へのインタビューや植物の観察、情報端末での撮影等により、必要な情報を収集するとともに、気づいたことを記録する(=協働学習)。

協働学習 3 協働学習 2

これに加え先生へのサポートとして、教員の教材作成・学習履歴の活用・教員間の情報共有等、校務の情報化における活用も、想定されている重要なポイントだ。

教育のデジタル化における、電子教科書規格標準化の意義

こういうとき日本ではすぐに、「なるほど、では情報機器をどう作るか」「情報機器同士をどうつなぐかが課題」、といったハードでの思考に行きがち。確かにそれも大事だが、中心に座るコンテンツ、電子教科書・教材の規格が標準化され、その標準仕様を前提に機器のソフト部分が構成されている必要がある。そうでないと、あの教育委員会では、このメーカーのモノこの規格を使ったが、この教育委員会ではあのメーカーであの規格、といったことになり、これでは、たとえば教員間の情報共有も特定の教育委員会の中に閉じてしまう。そもそも、ネットからの情報収集との間に断絶がでかねない。

場面接続を支援するICT (1)

ネットからの一般的な情報収集はもちろん、学年が進むにつれ、情報リテラシーの涵養に合わせ段階的に導入するものだとしても、教育のデジタル化、教育の情報化のアーキテクチャがネットを無視して構築されることはまずありえないこと。

ネットの標準規格はW3Cが担っている。電子書籍の国際標準規格であるEPUBはネットを構成している、HTMLとCSSを下敷きに作られており、IDPFがその責任主体。そこにテスト、ドリル、演習問題のデジタル化、そして学習結果の評価、進捗度管理などで長く、そのアーキテクチャ構築の分野で知見、ノウハウを築いてきたIMS/GLC、この三者が共同作業を行うのが一番効率的、かつ成功度が高いと言える。

EDUPUB三銃士

実際、下記田村氏の資料にもある通り、他のプロジェクトも走り始めていたのだがいずれも休眠状態なのが現状。四回の会合を重ね、フランクフルトで中間報告をする(正式の発表はないが、もともとはそういった計画があった)までの、実践的な活動(週次で電話会議)をしているのはEDUPUBのみ。

電子教科書仕様策定の動き

一番上、米国の電気工学・電子工学技術の学会、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)ではActionable Data Bookプロジェクトが2011年からスタート、各種調査を実施しているがまだ報告書等の発表をするには至っていない。

ヨーロッパの欧州標準化委員会、CEN(European Committee for Standardization)では2012年にeTernityプロジェクトを発足、共通のビジョン、フレームワークや教育目的のためのe-教科書の仕様を開発しようとしている。

IMS Global Learning ConsortiumではICEプロジェクトが2013年から電子教科書の仕様を議論している。

またISO/IEC JTC1/SC36は2012年秋からe-Textbook Projectを開始。現状はイギリス、フランス、中国、韓国、日本のメンバー5名が情報収集やアンケート調査を進めている段階。実はこの日の発表者のひとり田村氏はこのISO関連の活動のメンバーでもあり、EDUPUB第三回目の会合は、ISOとの情報共有も企図、ISOの会合と同時期にオスロで開催された経緯がある。

なにがどこまで検討されているのか

それではこういったことを実現するには電子教科書の規格という観点で何が必要なのか。電子書籍の国際標準規格であるEPUBに何を加えていくのか、その全体像を整理したのが、田村氏の下図。

電子教科書に関係する機能

真ん中が、現在のEPUB3。その下に記述されている機能のうち「ノートテイク」はW3Cが進めている「アノテーション」が担う可能性があり、その議論がEDUPUBで議論されている。また右にある機能は主にIMS/GLCのこれまでの成果物をEPUBへ移植するための検討が進められている。

このうちIMS/GLCの規格移植については、「HTML5ベースの再構成が始まっている(田村真氏)」段階であるといった事情があり、全体の中でやや進捗が遅い。今回、四回目の国際会議、EDUPUB Tokyo 2014の場において、来年、2015年2月米国のフェニックスにおいて開催される会議を目標に、さらなる検討を進めることがアナウンスされた。

これまでの成果物、ドラフトは下記URLから閲覧することができる。

●EPUB 3 EDUPUB Profile public draft 2 released Sep 8
http://idpf.org/epub/profiles/edu/spec/

● “Satellite Specs” referenced in EDUPUB Profile:
・ Open Annotation in EPUB http://idpf.org/epub/oa/
・ EPUB Discrete Objects http://idpf.org/epub/do/
・ EPUB Widgets Packaging and Integration http://idpf.org/epub/widgets/

● And from IMS: Using Caliper Analytics, QTI and LTI with EPUB 3: EDUPUB Best Practices http://www.imsglobal.org/edupub/index.html

(日本語での解説は、下記「◇関連クリップ」の3点をご覧ください)


◇関連クリップ
●「読書」を変える、EDUPUB・オープンアノテーション https://societyzero.wordpress.com/2014/09/04/00-82/

●EDUPUB | 詩想舎の情報note https://societyzero.wordpress.com/edupub/

●セミナー備忘録:電子教科書のドリルをどうする!?(2)~「教育の再設計」とEDUPUB https://societyzero.wordpress.com/2014/08/04/00-48/


◆関連クリップ
●EDUPUB概要説明/田村 恭久 氏 上智大学

●EPUB and the Open Web Platform as the Fundament for Education Publishing/Bill McCoy 氏 IDPF Executive Director

●A New Architecture for Learning/Rob Abel 氏 IMS/GLC CEO

●Publishing and Education Service on the Open Web Platform/Yong-Sang Cho

●平成25年度 文部科学白書第11章 情報通信技術の活用の推進
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpab201401/1350715_018.pdf

●教育の情報化ビジョン http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/23/04/__icsFiles/afieldfile/2011/04/28/1305484_01_1.pdf
21世紀にふさわしい教育を目指して、2020年度までにはすべての科目でデジタル教科書が制作され、授業で活用される予定。そのため政府は、ふたつのプロジェクトをすでに走らせている(電通(文科省=EPUB)とJAPET(総務省=HTML))。(パンフ http://bit.ly/1uQPdb7 )

●日本における教育と情報の施策 変遷とこれから http://www.slideshare.net/kotatsurin/ss-36096332

●NTT/「教育スクウェア×ICT」の成果と課題そして「教育クラウド」へ http://ict-enews.net/zoomin/0217ntt/

●教育改善に向けた学習履歴データ 活用の可能性と課題 http://www.slideshare.net/katshige/ss-38729953
始まりはMOOC。そして最近多くの大学で組織的対応が進んでいる大学のICTを所管する組織。そこがMOOCの履歴情報を学習履歴として、どう活用できるのかを研究した。それも「オープン」を旗印に、教材開発、その共有を北海道内複数の大学で行った実践を通した成果発表。


「デジタル化」への真の理解なしに、仕事の評価も、ビジネスの存続もない。
さあ、お役立てください、『情報note|知のパラダイムシフト(Kindle版)』を。
http://landingeducation.businesscatalyst.com/index.html

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